犬はあっという間に年をとっていく……とういのは、その時になって気がつくものです。
犬の寿命は長くても20年ちょい程度。
人間とは年をとるスピードが違うとわかってはいても、犬の老いに気づいてしまったときは、ショックをうけてしまいます。だって、自分の子どもや弟、妹みたいな存在だった愛犬が、いつの間にか自分の年を越して老いているのですから。
老いの症状は、次から次へと現れます。
顔に白髪が出てきたと思ったら、動きが鈍くなってきて、ボールを投げても走らなくなったり、遊びに興味を示さなくなったり。
目がよく見えなくなり、耳が遠くなり、家具に飛び乗れなくなり、立ち上がるのが難しくなり、歩くのが難しくなり、痩せてきたり、ウンチが出にくくなったり、認知機能が衰えて、散歩に行っても同じところを行ったり来たりしてしまったり―――。
「ついこの間まで元気に歩いていたのに………」と、気持ちがついていけないし、どうしても残された時間のことを考えてしまい、気持ちが暗くなっていくものです。
でも、暗くなっている場合ではないのです!
愛犬の老化と向き合わずにそのままにしておけば、老いは加速していくだけですが、保護者さんのケアの仕方で、犬の若々しさをサポートすることは可能です。
愛犬の老化予防のために、やってあげるべきことを紹介します。
犬の若さを保つ方法
老化を遅らせるためには、食事や運動に気を配るなどのケアが必要です。
人間の場合はやる気があれば自分でできますが、犬の場合は保護者さんのやる気と愛情にかかっているといっても過言ではないと思います。
刺激を与え続ける

年をとり、いろいろなものに関心が薄れてくるからこそ、その分、楽しい刺激を与えてあげることが大切です。
新しいおもちゃを与える
石でも木でも、どんなものにも興味を持ち、喜んでいた若い頃とは違い、シニアになるにつれ、新しいおもちゃ与えても、興味を示さないことも多くなってきます。
それでも、音が鳴るものや動くもの、美味しいニオイがするものなど、愛犬が気に入るようなおもちゃをどんどん与えてあげましょう。
ニオイをたくさんかがせてあげる

犬はニオイから、ほかの動物の性別や健康状況、年齢、精神状態、生理状態や、どんな生きものか、どんな食べ物かなど、あらゆる情報をキャッチしています。
嗅覚を中心にして世界を感じ、生活しているのです。
でも、私たち人間は主に視覚にたよって生きているので、犬にとって最も重要な「ニオイを嗅ぐ」行動をないがしろにしがちです。
お散歩中に犬が立ち止まって、一生懸命ニオイを嗅いで調査しているのに、「行くよ」と、飼い主さんに引っ張られていく姿はよく見られる光景です。
ニオイをかぐことは犬の生活の重要な要素であり、脳を活発に働かせる最大の知的活動であり、楽しみであり、喜びです。
お散歩中にクンクンとニオイを嗅ぎ出したら決して邪魔をせず、思う存分かがせてあげましょう。
ノーズワーク
犬の嗅覚を使ったトレーニング。
家庭でも、箱の中や家具のすき間、マットの下などにおやつを隠して、探させることで、ゲームとして簡単に楽しめます。
お散歩に行きたがらなくなっても、できるだけ外に連れだそう

高齢になると犬の筋力も気力も衰えていき、大好きだったはずのお散歩にも興味を失ってきます。
だからといって連れていくのをやめてしまうと、筋力はどんどん衰えていき、また外からの刺激を受ける機会も減って、認知機能も低下していきます。
ケガや病気で動くことが制限されている場合は別ですが、そうでなければ、これまでより距離や時間を少なくするなど、できる範囲でお散歩に連れ出しましょう。
バギーを利用するのも良い方法です。
お散歩の行き帰りはバギーに乗せて、犬のお気に入りの公園まで連れていったり、おトイレのために少しだけ歩かせてあげるのでもいいと思います。
ほかの犬や人に会ってあいさつしたり、いろいろなニオイをかいだり、音を聞いたり、ものを見たりすることは、生き生きとした犬の生活にとても重要です。
高齢犬に必要な食事を与える
年をとってくると運動量も代謝量も低下していきます。
ここで勘違いしやすいのは、運動量が減ってきたからと、太らないようにカロリーだけを気にしてフードを選ぶこと。フード選びで大切なのは栄養素です。
加齢に伴い必要なエネルギー摂取量は20%減りますが、その一方、必要なたんぱく質量は50%も増えるそうです。これまで以上に良質の動物性たんぱく質が多いフードを与えることが必要なのです。
フードを購入する際は、パッケージの栄養表示をチェックしてたんぱく質が多いものを与えましょう。
できればパッケージに「動物性たんぱく質〇%」ときちんと表示されているものがいいと思います。
栄養補助食品を与える
人間と同様、犬も高齢になると認知機能障害を発症します。
認知機能障害を持つ犬に行われた臨床試験では、抗酸化物質を多く含む食事を与えると、認知機能障害の要因のひとつであるフリーラジカルの生成が抑制され、体内のフリーラジカルを減らすことができ、一部の高齢犬では学習課題の学習と記憶力の改善が見られたという結果が出ていて、認知機能が低下する速度が遅くなることが示されました。
食品に含まれる抗酸化物質には次のようなものがあります。
- ビタミンE
- ビタミンC
- セレン
- L-カルニチン
- アルファリポ酸
- フラボノイド
- カロテノイド
犬の認知機能に配慮したフード
・ヒルズ「Prescription Diet b/d Brain Aging Care」
犬の認知機能をサポートするために、さまざまな抗酸化物質を強化したフードです。
認知症の改善が期待されており、海外の動物病院では犬の認知症の食事療養食として提供されているようです。日本の病院で扱っているかは不明なので、掛かりつけの病院に尋ねてみてください。
Hill’sPrescription Diet b/d Brain Aging Care
・ヒルズ サイエンスダイエットシニア シニアプラス
ヒルズ独自の抗酸化ブレンド(ビタミンE&C、ベータカロテンなど)やオメガ3脂肪酸などを配合し、高齢犬の脳と体の健康をサポートします。
・ピュリナ プロプラン NCニューロケア
抗酸化成分・中鎖脂肪酸を配合し、突発性てんかんのほか、粗相や夜鳴きなどの認知機能不全症候群に関する症状にも配慮したフードです。
・ロイヤルカナン エイジングケア
加齢により様々な影響が出る腎臓、心臓、脳などの健康維持に配慮し、活力維持のための栄養素を配合した中高齢犬の健康に配慮したフード。
健康診断の回数を増やす
高齢犬では元気がない、食欲がないといった状態になっても、「年のせいかな」と考えがちです。
でも、実は深刻な病気の場合もあるので、安易に「年のせい」と考えないで、逆にこれまで以上に体の変化に注意して、変だな通ったらすぐに動物病院で診てもらいましょう。
老化を理解してこれまで以上に愛情を注ごう

年をとるにつれ、筋力も視力も聴力も認知機能も衰えてきます。
これは人間と同じです。
歩くのが遅い、呼んでも反応しない、粗相をする、同じ道を行ったり来たりするといった状態に、イライラしている保護者さんを見かけることがあります。
でも、誰だって年をとったらあらゆる機能が衰えていくのは当たり前のことです。
早く歩けと言われても歩けないし、何かを指示されてもよく分からないし、呼ばれても気が付かないのです。
愛犬の老化の変化をきちんと理解してあげることが、高齢になった愛犬の幸せには必要です。
そして、何より、これまで以上に注意深く愛情をもって寄りそってあげることが、愛犬の心身の健康につながるのです。