ストレスは万病のもとと言いますが、これって人間だけのことではありません。
犬の心身にも大きな影響を及ぼします。
飼い主さんの普段の何気ない動作や、生活環境が、気づかぬうちに犬にストレスを与えているかもしれません。
犬が感じるストレスにはどんなものがあるのか、また、ストレスを受けると身体はどう反応するのか説明したいと思います。
そもそもストレスとは
ストレスとは、外部からの刺激(ストレッサー)によって体に生じる防御反応です。
ストレスの原因となるものを「ストレッサー」と言い、ストレッサーには暑さや寒さ、騒音などの「物理的・化学的」なもの、病気や飢え・睡眠不足などの「生理的」なもの、緊張や不安、恐怖、怒りなどの「心理的」なものがあります。
犬のストレッサー
犬のストレッサーを具体的にあげてみましょう。
・空腹や喉の渇き
・体の痛み
・体の不調
・寒さや暑さ
・騒音
・長い留守番
・運動不足
・排出できない(トイレにいけない)
・恐怖
・急激な環境の変化(引越しや知らない場所に預けられる・パートナーの死など)
・過度なトレーニング
・過度な運動
・退屈
・無視される
・過度な興奮(遊びなども入ります)
・自分への脅威
・暴力的な環境(けんかや大声など)
・落ち着かない環境(多頭飼いや子供にいつも触られるなど)
・いつも狭い場所に閉じ込められている
・睡眠不足
・天候(雷など)
など。いろいろありますね。
ストレスの影響は?
それではストレスを受けると、どのような影響があるのでしょうか。
動物の身体は、「自律神経(体の働きを調整)」「内分泌系(ホルモンの分泌を調整)」「免疫系(外部からの異物の侵入を防ぐ)」が密接にバランスを取って健康を維持しています。
また、常に一定の安定した状態に保とうとするホメオスタシス(恒常性)というシステムを持っており、そのおかげで環境の変化によって体内に変化が起きた場合でも、元の正常な状態に戻れるようになっています。
ストレスを感じると、自律神経、内分泌系、免疫系はストレス反応を起こして、ホメオスタシスを維持しようと頑張りますが、慢性的なストレスや過度なストレスによってバランスを崩し、ホメオスタシスを乱してさまざまな病気を引き起こすのです。
自律神経系のストレス反応
自律神経は、自分の意思に関係なく、内臓の機能や代謝、体温などを調節する神経です。
自律神経には「交感神経」と「副交感神経」の2つがあり、「交感神経」は活動しているとき、「副交感神経」はリラックスしているときに活発になります。
ストレスによって交感神経が刺激されるとアドレナリンが分泌されます。
それによって副交感神経優位の状態から交感神経優位の状態へと切り替わり、心拍数や血圧、血糖値が上がったり、瞳孔が拡大したり、筋肉が緊張したりします。
これは、闘ったり、逃げたりするときに必要なストレス反応です。
内分泌系のストレス反応
ストレスを感じると、副腎からストレスホルモンと呼ばれるコルチゾールを分泌します。
コルチゾールには抗炎症作用があるほか、血圧を上げるなどしてストレスに負けず、体が上手く動けるように指令を出します。
免疫系のストレス反応
交感神経やコルチゾールの分泌が活発になると、一般的に免疫系が抑制されます。
つまりス、トレスによって免疫系が抑制されて、感染した細胞を攻撃するキラー細胞の力が弱まります。
また、ストレスを受け続けると体内の活性酸素が増加します。
活性酸素は老化や免疫機能の低下、がんや動脈硬化などを促進するだけでなく、コルチゾールの分泌調整機能を狂わせるので、コルチゾールが分泌し続け、肥満や糖尿病などいろいろな病気を引き起こす要因となります。
犬にはこんなこともストレスです!
愛犬の健康を守るためにはなるべくストレッサーを減らすことが大切ですが、意外と私たちが気づかないところで犬はストレスを感じています。
日常的な動作のなかでも、無意識に犬を「ドキッ」と驚かせたり、「ビクッ」と怖がらせたりしてストレスを与えているので注意が必要です。
よくやりがちなストレス行為
・急に触る
予期せぬ状態で急に体を触られるのは怖いもの。
特に寝ていたり、横になってリラックスしていたりする場合はなおさらです。
・見えない部分から触る
人間でもそうですが、後ろから急に肩を叩かれたり、頭を触られたり、見えない部分を触られたら驚きますよね。触るときには犬の視界に入るところから。
さらに声をかけて触ることを示してあげるとよいでしょう。
・急に大きな音をたてる
ドアの開け閉めや物を落とす音など、急に大きな音がすれば人間でも驚きます。
犬は聴覚に優れ、音に敏感です。無用に大きな音を出さないように気をつけましょう。
・急に抱き上げる
小型犬に対してよくみられることですが、急に抱き上げられるのも犬にとっては恐怖です。
体が突然、高いところまで持ち上げられるのことを想像してみてください。
まるで予期せぬジェットコースターです。
「抱っこするよ」と声をかけるなど、合図を決めておくといいでしょう。
・急に動く
飼い主さんが動いたら、近くにいた愛犬がビクッと驚いたという経験はないですか?
だって急にそばで何かかが動いたら怖いですものね。
その瞬間、「ドキッ」として、交感神経に切り替わります。
・リードを強く引っ張る
リードをむやみに強く引く、急に引っ張るのもストレスです。
・コマンドが多すぎる
むやみにしつけに厳しい方がいます。
何をするにもいちいち指示を出されたら、犬はいつも緊張状態。
そんな犬の体は多くの場合、こっています。
・理由なく怒鳴る
すぐ怒鳴るお父さんやお母さんの前では、子供はいつもびくびく怯えて緊張しています。
犬も同じです。
すぐに怒鳴られるのは、とても怖くてストレスです。
・大声で威圧的に話す
話し方や声の大きさなどで、犬は飼い主さんの気持ちを敏感に感じます。
大声や威圧的な声のかけ方は犬に不安や恐怖心を与え、ストレスです。
・触りすぎ
犬が静かに休みたいときもあります。
ずっとかまわれたり、触られ続けられたりするのもストレスなので、犬がリラックスできる場所を用意してあげましょう。
犬がストレスを感じているときの行動、サイン
・自分の身体を噛む
・体を搔く
・体をブルブル振る
・伸びやあくび
・落ち着きがなくなる
・体をなめる
・目を反らす
・吠える、唸る
・噛む
・震える
・家具や靴など、物を噛む
・ふけが出る
・脱毛
・自分の尻尾を追いかける、噛む
・口や身体からの悪臭
・筋肉の緊張
・動悸が激しくなる
・食欲減退
・下痢
・嘔吐
・頻尿 など。
まとめ
人間と同様に、ストレスは犬の健康に大きな悪影響を及ぼします。
そして、飼い主さんに寄り添い、人間の生活に合わせて生きる犬たちは、いろいろな場面でストレスを感じているものです。
犬が健康でいるためには、「ドキドキ」「ビクビク」するストレッサーに気づき、できるだけ取り除いてあげることが大切です。
飼い主さんと一緒に、リラックスして楽しく過ごせる環境を作ってあげてくださいね。